石田郷子/「笹鳴」より
観音に鐘鳴らしけり冬はじめ
冬ぬくし天道虫があまた飛び
多摩川を渡つてきしと
漣のぎらぎらとして冬木の芽
夕映の胸下りてくる百合鴎
さつきから水洟の子がついてくる
和菓子屋の前の八つ手と山茶花と
返り咲くものに水輪の開きけり
笹鳴に始まつてゐる日曜日
切株に坐りて冬の子どもかな
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